もっと野生のサケを
寺島一男 (ヌタプカムシペ166 号) より
≪前略≫ このような意味もあってか、いま野生魚の存在に目を向ける人は多い。先の研究者によると近年大規模に行われている耳石温度標識[*]によって、圧倒的多数と思われていた放流魚の中に無視できないレベルの野生のサケが存在し、実は不漁時のふ化放流事業にも大きく貢献しているのだという。
この指摘はタンパク資源確保の面だけでなく、私たちが目指している自然環境保全の面でも極めて有益である。内陸の発展とともに森林の劣化や河川の荒廃等が進み、それに伴ってサケのふ化放流事業もより効果的な方向を求めて内陸から沿岸に向かった。それとともに川とのつきあいを欠いたサケが拡大した。いくつか報告を読むと、サケが遡上する湖としない湖では、還元される栄養塩類に大きな違いがあると記されている。また、サケが遡上する流域では、食物連鎖等を通じた生物のつながりが多岐・多様で、いかに流域の生態系を豊にしているかを示す報告もある。
改変の程度が小さな川で細々と、しかし営々とその川で個性豊かな這伝子を引き継いでいる「天然のサケ」もいる。これらとともに、「野生のサケ」は今後ますます重視されるに違いない。上流部を含めて「石狩川を野生のサケのふるさとに」したいとする私たちの小さな取り組みも、その一端を担えているならうれしい。
2023年度道県別さけます来遊状況
2023年度の道県別来遊数(3月21日更新)が,水産資源研究所のホームページ上に掲載されています.北海道は太平洋側も日本海側も昨年よりかなり少ないようです.詳しくは上記のリンクで.